演出:天野マリ×脚本:Chani 鼎談 中篇
演出の天野マリさんと脚本のChaniさんに、今回の舞台『CLOCK ZERO ~終焉の一秒~ WatchOver』について、お話して頂きました。
舞台本編の内容や結末に触れておりますので、舞台をご覧になった方用の鼎談となっております。
キャラクターや解釈については「舞台版は」ということでお読みください。
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後篇
――ある意味、12歳の撫子と壊れた世界の男の子たちは出会って変わっていくのですが。
『リンゲージ』では「体に精神が順応していく」と反逆者のセリフにあるのですが、もしかして撫子が菩薩みたいとお二人が感じられるのはそういうことなのかなって思いました。
女の子は元々精神年齢高い生き物で、急激に成長していきながら、男性の気持ちを受け入れられるような存在になっていくのに、男の子たちは時が停まった世界で成長が追いつく前に現状に対応しなくちゃいけないから、本当は子どものままで。その子どものまま、傷を抱えた大人たちが撫子によって解放される話がこの『CZ』なのかな、と腑に落ちました。
天野
そうですね、ずっと色んなルートをさせてもらうとそうですよね。どんな子でも撫子は受け入れますよね。
――Chaniさん、撫子って描きやすいですか、描きにくいですか?
Chani
書きやすいです。自分のなかではそんなに遠い存在ではないと感じていて、自分で勝手に思っているだけなんですけど。(笑)
理解できなくないですね。
――でも、撫子も戻れるか戻れないかという不安な心はずっと抱えたままなので、幼馴染のルートだとそこは顕著に出せるのですが、ビショップENDと反逆者ENDだとそこは余り描かれないじゃないですか、
撫子はどう思っているんでしょうか。
Chani
あくまでも私自身が考えているのは、撫子も何かしら大人ぶってるところがあって、男性たちがそんなに遠い存在ではないんだと、どこかで理解できていると思います。
理一郎はすでに心を開いている存在だから、本音を言えたんだと思います。まだ、他の人たちにはそこまでの状態ではなく、これから先、心を開いていったらそうなるんだなと思います。でも、理一郎の代わりが現れたとしても、理一郎は理一郎で特別な存在なんだと思います。
天野
一人そういう存在がいるだけで救われますよね。
撫子にとって理一郎は幼馴染だし心を開いているから、そういったそばにいるキャラクターがいるだけで、孤軍奮闘ではないというか。
――ビショップENDと反逆者ENDのそれぞれ見て欲しいところは?
天野
ビショップENDは最後の未来のシーンの夕日を眺めるところ。反逆者ENDは全部って言いたいところですね。(笑) 見どころ満載です。
Chani
こんなに深い話をしておきながら、反逆者ENDは萌えです。ビショップENDは夕日を見るところです。
天野
今回は夕日なんですよ。
キングも夕日を眺めているんですけどね(笑)
Chani
私は夕日に切なさを感じるんです。夕日は心情を象徴していると思っています。
天野
陽が沈んで終わるとかじゃなくて、あの明かりかな。
あの夕陽の、なんとも言えないオレンジの明かりというのが今回の心情としては、朝のパキッとした光の希望ではなく、夕陽で希望は変だけど、あの暖かさに痛みの中の安らぎの安らぎの部分が夕陽で、
キングもキングで撫子の事を思っているだけで安らぎを得られているんでしょうね。夕陽を眺めていることでって思うんです。
――朝のパキッとした希望溢れる光ではなく、包み込むような、郷愁を呼び起こすような明かりということですね。これまでのキングENDの最後のシーンも夕陽で、ビショップENDは今回が初めてですね。
Chaniさん、反逆者ENDの「萌え」とは?
Chani
直接的に見えるものでもなく、妄想して頂けるような萌えですね。
――具体的には?
Chani
これはお話でも出てくるんですけど、「反逆者の、獣である部分が出てしまった。そんな自分に、「あっごめん」というところの萌え」ですね。凄い具体的に言うと、我慢しているんですけど、自分の獣性が出てしまった事に対して、自分がハッとするところ、そこに女性は可愛いと思うのではないかと、私が思っているのかもしれないですね。
――ちなみに『WatchOver』の他のサブタイトル候補に「bea-tiful-st」という造語もありました。ビショップと反逆者を置き換えると美しいとか獣という単語から離れられなくて(笑)。Chaniさん浄化と獣性って難しいところを書かれましたね。リクエストしといてなんですけど。(笑)
Chani
ありがとうございます。(笑)
――天野さんの反逆者ENDの見どころは?
天野
反対に、あんだけキュンって言っといてあれなんですけど、私はやっぱり最後の根本を絶つシーンで、事情を把握していない子供撫子に向かって、あの行為をしてしまった、それこそ自分の存在が無くなってしまう、命懸けで彼女の幸せを願っていくところまで、反対に言うと浄化したというか、ビショップENDじゃないけど、それも浄化といえば、らしい浄化なのかなって思います。
究極の愛だと思いますよ。そんな人に出会えて幸せだと思います。
――その行為すら忘れてしまうんですけどね。
Chani
切ないですね。
天野
言われている撫子がわかってないですからね。
――この瞬間までは何となくわかっているんですよね。忘れていくんですけどね。最後にありがとうですよ、泣いちゃいますって。
天野
反逆者は本当に嬉しかったんだと思いますよ。
妄想とかやっぱりさ、全員命懸けで愛される人に出会いたいというか、どこかで運命の人に出会いたいという気持ちはずっと抱えているから、これはその全員が運命の人だし、命懸けで守れる存在に出会っている。最初に言っていた究極のラブストーリーっていうのが合っていると思います。
――北村さんが雑誌の取材(3月末発売のStagePash!)ですごくいいコメントをされていたんです。反逆者ENDは、男性が共感できるキャラクターとお話だから男性の人にも観て欲しいって。今までの『CZ』って女心が中心にある方に共感を頂いていましたが、今回はビショップの強引なところと反逆者の究極の愛の選択を観た時に男性にも訴えられるなって思いました。
天野
殺陣シーンも結構ありますし、ナイフやピストルも出ますからね。
――殺陣シーンは変わりますか?
天野
変わりますね。
キレッキレでみんな成長しています。
――殺陣シーンって脚本でも戦うってしか書けないと思うんですけど、Chaniさん的には殺陣シーンって楽しみですか?
Chani
そうですね、めっちゃワクワクしています。(笑)
カッコいいって。
天野
女子もカッコいいと思うけど、こういうのって男性も好きじゃないですか、男性も観たら楽しいなって思います。
<中篇に続く>